安全サインアプローチから学ぶ(1)

安心づくり安全探しアプローチ(AAA)は、子ども虐待事例への対応アプローチである「安全サインアプローチ(サインズ・オブ・セイフティ・アプローチ)」を、1つの理論的な拠り所としていまうす。

その安全サインアプローチの特徴は、井上薫さんによれば、4つあります。高齢者虐待対応アプローチであるAAAでも、この4つを重視し、大切にしていきたいと考えています。井上薫井上直美『子ども虐待防止のための家族支援ガイド』(明石書店)をもとに、その4つをご紹介します。

(1) 当事者の声に耳を傾ける(15ページ)
 専門職は、専門職の視点から当事者の問題を指摘したり、当事者はこうあるべきだとする支援計画を立てて「専門職側のストーリー」を語りがちです。

 しかしそれは事実の一側面です。もう一つの側面である「当事者のストーリー」に耳を傾けることです。当事者が言いたいこと、聞いてほしいと思っていること、当事者が専門職に聞きたいと思っていることなど、当事者の声に耳を傾けることは、専門職と当事者との溝を埋め、関係性を作っていくのに有効のはずです。

 「介護者ではなく、ひとりの人間として扱ってもらいたい」
 「なぜこの状況なのか、自分たちの言い分も聞き、理解してもらいたい」
 「なぜ、あなた方は自分たちのところに来るのか、何しにくるのか」

 もちろん、ソーシャルワーカーやケアマネジャーの方々は、日々の実践において、当事者の声に耳を傾けることから支援を始めていらっしゃると思います。ただ、虐待事例や虐待おそれがある事例ということになると、どうしても、養護者は怖い人とか、いろいろな問題や欠点をもった人、といった「思い込み」にとらわれがちです。

 その「思い込み」をいったん、カッコに入れておくために、「当事者の声に耳を傾ける」という原則を改めて意識化することが大切だと考えます。

(2) 2つの「よい関係」を重視する(16ページ)
 1つは専門職と家族とのよい関係で、これをパートナーシップと呼びます。もう一つは専門職同士のよい関係で、これはコラボレーションと呼ばれます。

 パートナーシップは、課題を一緒に取り組む関係のことです。課題とは、高齢者と家族が安全に安心して暮らすことができる状況をつくっていく過程に、専門職と(高齢者)家族のそれぞれが責任をもって関わることです。 
 パートナーシップをつくるには、専門職側のスキルが求められます。これを研修で学んでいただいています。

 コラボレーションは、多職種・多機関からなるネットワークによって、支援を計測的、総合的、組織的に行うことです(これについては、また機会があればお話しさせていただきます)。

少々長くなりましたので、(3)と(4)については、次回に。


安心づくり安全探しアプローチ(AAA)