安全サインアプローチから学ぶ(2)

安全サインアプローチの特徴について、すぐに書くつもりが1か月も空いてしまいました。すみません。さっそく、井上薫井上直美先生たちの『子ども虐待防止のための家族支援ガイド』(明石書店 16-17ページ)をもとに、今回はその3つ目をご紹介します。そして、AAAでは、この特徴をどのように活かそうとしているのか、について述べます。


3つ目の特徴は、次の3つに関心の焦点を当てることです。
①私たちが心配していることは何か?
②うまくいっていることは何か?
③何が起きるのをみせてもらう必要があるか?

①私たちが心配していることというのは、
・「危害状況はどんなものか」、「その危害状況はどのようにして起きているのか」=「虐待エピソード発生のパターンはどのようなものか」
・「危害状況を複雑・困難にしているリスクは何か」
の2つです。

AAAでは、<危害・リスク確認シート>によってこの2つの心配を確認しようと考えました。


また、<タイムシート>で、時間を追って高齢者本人と養護者の生活状況を聞いていくと、「虐待エピソード発生のパターン」を浮き彫りにすることができるとも考えています。


表面化してきた虐待発生のパターンを、援助職自身が、あるいは、援助職が高齢者本人や養護者と一緒に確認する作業ができるように、<安心づくりシート>には、「心配なことが起こりやすいパターン」を書き込む欄を設けました。


②うまくいっていることというのは、
・「危害状況が起きそうなときに、それが起きなかったり、それ以上悪化しなかったりしたのは、どんな状況であったのか」(例外探し)
・「それ以外のリソースや強み、うまくいっていることなど、改善に役立ちそうな肯定的側面は何か」
の2つです。


AAAでは、<安全探しシート>を作成し、高齢者本人や養護者のリソースや強みをできるだけ多く確認できるようにしました。


また、<タイムシート>を使った会話を通して例外探しを行い、<安心づくりシート>を用いて例外が起きた状況を確認していきます。


③何が起きているのをみせてもらう必要があるか、というのは、解決像は何か、ということです。みせてもらう必要があるのは、次の2つのことです。

・虐待の危害状況から守られていることが具体的に示されること。つまり、危害が起きそうなパターンを防ぐネットワークや手立てがうまく機能している状況が具体的に示されることです。これが、虐待対応としての目標であり、虐待対応としてのかかわりを終結できる状況ということです。
・高齢者本人や養護者が望む生活の様子。彼らが望む生活の状況を作っていくために何がやれるかを一緒に考えていくことになります。


AAAでは、<プランニングシート(機関用)>によって、援助職がチームでこの解決像をイメージするようにしました。また、<プランニングシート(話し合い用)>によって、援助職が高齢者本人や養護者と一緒に、この2つの側面をもつ解決像をつくっていくことを促しています。


AAAには、上記したように安全サインアプローチの特徴を反映させた各種のシートがあります。しかし、私たちは、このシートを必ず使ってほしい、と言っているわけではありません。シートはあくまでも、安全サインアプローチの考え方を反映させた、高齢者虐待防止対応のためのツール(道具)です。


各種のシートは、この3つの考え方の特徴を理解し、その考え方に沿った援助をしていくうえで役立つためのツールにすぎません。大切なのは、シートを使うことではなく、この考え方の特徴を理解し、実践していただくことです。


AAAは、高齢者の人権保護よりも養護者支援を重視しているのではないか、それでは虐待されている高齢者は救われないのではないか、という懸念を持たれる方もいらっしゃるかと思います。それについての私たちの意見は、日を改めて書かせていただこうと思います。


安心づくり安全探しアプローチ
http://www.elderabuse-aaa.com/