厚生労働省通知+

ご承知の方も多いと思いますが、標記の通知、「高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査および養介護施設従事者等による虐待の状況を踏まえた対応の強化について」が出されました。


終わりのほうに、高齢者虐待防止ネットワーク構築の事例として国分寺市のものが紹介されています。


その国分寺市の添付資料の最後、研修・事業による人材養成のところに、「面接技術・協働スキル・ケースカンファレンスの研修」として、AAA研修(安心づくり安全探しアプローチ)をあげていただきました。


昨年、福祉関係の学会でAAAのことを話した際、ある方から、実践に有益と考えるのなら、厚生労働省になんらかの形で働きかけ、各自治体で研修ができるように働きかけるべきじゃないのか?と言われました。


私たちAAA研究会としては、実践者の方々の口コミで広がっていけばよいという考えでしたので、そのときは、そうですね、と答えただけでした。


AAA研究会では、AAAが虐待の悪化防止や予防に役だっているということを10程度の事例では示しましたが、量的調査による統計結果を出していません。厚生労働省を初めとして行政府は、数字によるエビデンス(根拠)を求めるから、という認識もありました。


ですので、こういう形で取り上げていただいたことを光栄に思います。


ところで、今、チャンスをいただいてアメリカに来ています。一昨日、ある州のソーシャルワーカーアドボカシー(権利擁護)デイに参加しました。


そこでは、役職のソーシャルワーカーや研究者、ロビイストソーシャルワークの大学院生などによって、集まったソーシャルワーカーに対し、「これこれの利用者のために」、こういう政策の実現を州の議員たちに求めていこう、こういう法は改正させよう、といった呼びかけが行われていました。


実際、その会の後には、いくつかのグループが、それぞれ州の議員に会いに、州の議事堂に行っていました。


が、それよりもすごいなあ、と思ったのは、その場が、自分たちは自由と権利を守るソーシャルワーカーであり、個別援助というミクロソーシャルワークと、(州の)政策実現や法制定等を目指すマクロソーシャルワークの両方の実践者であるということを、何度もみんなで、力強く確認しあう場であったことです。


こうやって自分たちを鼓舞しあうことも必要なんだろうな、と思いました。


そこに参加していた現地の大学関係者によると、ソーシャルワーク教育においても、個別実践をマクロの政策・制度と関連づけて理解し、実践することを、また、個別実践から政策・制度の制定や改正等を図ることを考え、実践することを教えているとのことでした。


日本では今、地域ケア会議等で、個別事例から地域課題をみつけ、その対応のためのサービス開発や政策実現を図るよう働きかける、また、その実践を行う、ということが求められています。

アメリカでは、ソーシャルワーカーたちが、個別実践を踏まえて州の政策や法制度に影響を与えるような働きかけを期待されています。

日本とアメリカでは、ソーシャルワークの歴史、文化、社会の構造、ソーシャルワーカーの社会的地位、置かれている社会状況、社会からの役割期待などにおいてさまざまな違いがあります。

ですが、今日、どちらのソーシャルワーカーもミクロとマクロの両方の視点と方法をもって実践するよう社会から求められているのは確かですね。

ジェネラリスト・ソーシャルワークは、テキストのなかの「理論」の話ではなく、いよいよ福祉の現場で実践する「理論」と「方法」なのだと改めて思いました。


副田あけみ