【いただいたご質問より】どのくらい“しつこく“お話をお聴きするのでしょうか

研修の時にしばしば指摘されるのが、「例外」や「対処」についての話し合いのシナリオロールプレイにおける、援助職の「しつこさ」です。

興味深いことに「他人事」で解決志向の対話を観察しているとしばしば援助職の「しつこさ」「繰り返しの多さ」を指摘される方は多いです。

この辺りは実際には時間を割いて丁寧にロールプレイを行った方が、なぜこれだけ繰り返し粘り強く質問を重ねて行くのかに関してご実感いただけるのではないかと感じています。短い時間の中でそこまでお伝えできず申し訳ありません。

なぜ「例外」や「対処」の話を繰り返し、質問の仕方を変えてお聴きするのか。それには大切な理由があります。


 一つは、「例外」や「対処」を普段から意識している方は少ないからです。多くの人にとって、余り考えたことのないことを、援助職から(つまり普段よりは少し緊張する場面で)質問される、という体験です。その答えを考えるためには、時間と手助けが要ります。そしてこの「自分の体験を振り返りながら、何とか例外はあるのか、対処してきたのか」と考えていただく時間が、とても大切な時間になります。この時間をしっかり確保するために、また考えをしやすくするために、適宜補足質問をはさんだり、同じことを質問を変えて尋ねたりするのです。
 実際の解決志向アプローチの面接ビデオ等をみていただければご理解いただけるのですが、同じことを聞かれていても、段々に利用者さんの表情が変化してきます。つまり、考えて自分の中に資源を発見していく、というプロセスが表情に浮かんでいるのです。


 “しつこく”繰り返しお聴きすることの二つ目の理由は、援助職の姿勢と覚悟がそこに現れるから、です。援助職はどうしても職務上「問題」や「不足」については根ほり葉ほり訊く姿勢が身についています。この「問題」や「不足」について詳細に訊く、という行為そのものが『あなたには問題や不足がたくさんありますね』というメッセージになっています。
 対人援助職としてそのようなメッセージだけを置き土産にしてしまうのはとても残念なことではないでしょうか。そして「例外」や「対処」を、ちょうど「問題」や「不足」をお聴きするときのように丁寧に繰り返し質問を変えてお尋ねすることは『あなたには問題ではない部分や、ご自分なりに対処するお力、そしてそれを支えてくれる人達が、いますね』というメッセージになりうるのです。

 援助職として、困難を抱えていらっしゃる方に対してどのような姿勢で臨んでいるのか、という問いに、皆さんはどうお答えになるでしょうか。私たちは、問題を抱えた方とステレオタイプ化しやすいからこそ、なおさら、お一人お一人の体験と強みに寄り添っていきたい、そういう姿勢を大切にしていきたい、と願っています。


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