なぜ安心を探すのか

安心づくり安全探しアプローチでは、初期から「安全探し」ということを強調しています。
これにはいくつかの理由や前提があります。

1)危害やリスクの確認を適切に行うのは前提である
当然ですが安全を確保するためにも危害やリスクの状況をきちんと把握することは必須です。

2)安全探しをきちんと行うことで逆説的にリスク要因も明確になる
危害やリスクを確認しようとして「目立つ問題点」だけに注意を向けると、目立たない問題点を見落としがちです。そのため目立つリスク要因がない=安全、と思いこんでしまい、隠されたリスク要因を見落としてしまうことがあります。
隠されたリスク要因の最大のものは「安全のサインが足りないこと」です。本人や介護者が自己肯定感を失わず、自分たち自身の中にある、また周辺にある資源を信じて、いつでも相談し頼りにするつもりである、といったような開かれた状況にあるかどうか、を把握できていなければ「十分安全だ」とは思えないと思います。『目立つリスク要因がなければ良い』という発想だと、こうした安全サインのこころもとなさを見落としがちです。

3)専門職としての介入、関係が持続する家族
措置の必要性があった時に速やかに措置に踏み切る覚悟を高めるためにも、「問題がある」だけではなく「これだけでは守れない」という援助職側の確信も必要です。特に本人・介護者がともに虐待の存在を否認する場合や措置分離を拒む場合はそうでしょう。そうした場合に、毅然とした判断をし、かつきちんと本人・介護者に説得に当たる上でも、問題点だけではなく安全探しもきちんと行って厚みのある情報収集を行い状況を包括的に理解することは役に立ちます。また分離後の介護者が自責感や孤立感から二次的に問題を抱えてしまうことを予防する上でも必要な視点です。



安心づくり安全探しアプローチでは、安全探しを行うことの方が危害リスクの確認より優先だと言っているわけではありません。被害者を守ることが第一です。ですが家族の中では個人が独立して存在しているわけではないのです。その難しさを踏まえて支援するためにも、危害やリスクだけではなく安全の材料も早い段階から探してほしい、と願っているのです。