タイムシートの意外な活用法

過日私たちが行いました、タイムシート活用の高齢者虐待防止研修に参加いただいた方が、下記のようなエッセイを書いてくださいました。さっそく許しを得て、AAAのブログにも掲載させていただくことにしました。
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「タイムシートの意外な活用法」  SK(団体職員)


去る6月13日、INPEAの「世界で高齢者虐待防止について考える日」のイベントの、ワークショップ「虐待対応の糸口をつかむタイムシート」に参加させていただいた。

高齢者・介護者の生活状況とニーズの把握に始まり、高齢者・介護者との関係づくりや介護者・支援者自身の気づきをもたらすことのできるタイムシートについて、学ばせていただいた。

ワークショップ後半では、隣の席の参加者と2人ひと組になりロールプレイを行った。テーマは「忙しい私の一日」。支援者役が、相手がどのような一日を過ごしているかを聞き取り、要約とフィードバックを行い、ねぎらいや相手の「強み」への気付きを促すといった内容だ。

私の隣に座った参加者は、妻だった。ワークショップの時間ぎりぎりに会場に来た私たちは、空いている席に横並びに座っていたのだ。離れて座るべきだった、と気付いたのはワークショップが始まったあと。ほぼ満員の会場ではもう席の移動もできない。

初めは私が支援者役。妻の生活を起床から順に聞いていく。もともと介護職だった妻は、結婚を機に仕事を辞め、今は専業主婦である。普段家で日中何をしているのか、そういえば改めて聞く機会もなかった。

妻は、私より30分早く起床し、弁当を作り、私を見送ったあとはごみ出し、洗濯をしてから朝食を摂る。あまりしていないのでは、と勝手に思っていた掃除も、毎日ではないがしてくれていた。夕食のための買い物も、なるべくいろいろなかたちで野菜を摂れるようにと工夫して、食材を選んでくれていた。

世間の感覚では当たり前のことなのかもしれないが、2人で仕事をしていた頃には考えられないような妻の専業主婦ぶりに、頭が下がった。

こんな機会でもなければ、しっかりと聞くこともなかっただろう妻の一日。ロールプレイのまとめのプロセスでは、思わず自然にお礼が出てしまった。

本来は虐待対応のためのタイムシートが、私たちの場合はお互いの生活を知り、感謝の念を新たにする助けになった。余計なことかもしれないが、2人の会話がなくなりつつある夫婦には、とても有効なツールなのではないだろうか。

夫婦関係でも介護者と支援者の関係でも、普段無意識に分かったつもりでいる自分自身や相手のことを改めて理解するためには、何かの仕掛けやツールが必要なのかもしれない。本来の目的から若干それてしまったタイムシートのロールプレイだったが、他にも応用できる分野があるのかもしれない…と思うのは私だけでしょうか?


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