老々介護「見守ったのに…」 80歳夫、妻に傷害容疑

老々介護「見守ったのに…」 80歳夫、妻に傷害容疑

2013年12月5日 の 読売新聞に掲載された記事です。

本ケースは、事件前から「老々介護」の現場として地域、行政、警察が連携して見守りを続け、福祉関係者の間では「地域も協力的で、比較的恵まれたケース」と思われてきたケースだったそうです。

それなのになぜ事件を防げなかったのか。関係者に重い課題が残ったと記事は伝えています。妻は、入院後、外傷による多臓器不全で死亡し死亡しています。

傷害容疑で逮捕された夫(80)は、認知症の症状が出ていた妻を日頃から暴行しており、近隣住民が8月に県警に「暴行しているようだ」と通報。

数日後、警察が自宅で夫に警告したところ、「わかりました。介護でストレスがたまっている」と夫は話しています。そのとき妻は「大丈夫です」と答えたため、それ以上の措置はとられませんでした。

その後、このケースの情報が市や地域包括支援センターに伝えられ、センター職員が訪問。2人に会っています。外見上、妻に暴行の痕がなく、玄関まで歩いてきたため、暴行の可能性は低いと判断。

しかし、センター職員は週1回とペースを上げて訪問。それ以外にも、「どなり声がする」といったセンターへの通報があるたびに確認のため訪問していました。ですが、夫のほうは次第に態度を硬化させ、「ちゃんとやっている。かまわないでくれ」とドアを開けなくなったとそうです。

市やセンター、駐在所、家族は11月に夫婦にデイサービス利用を促すことを確認したばかりで、同センターは「見守りはできているつもりだったが……」と落胆。

市は「人権とのバランスも考えながら、危険を回避する適切な介入のタイミングを探りたい」と答えているとのことです。

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あらためて、高齢者虐待事例への対応のむずかしさを感じさせられる事件です。

センター職員が2人に会ったときに、危害・リスクの確認だけでなく、安全につながるサインとしての資源やストレングスが少しでもあったのか、それともほとんどなかったのか。危害・リスク確認シートと安全探しシートの両方のシートを使っていたら、、、、、

危害がグレーゾーンである場合、安全につながる資源やストレングスを確認することは絶対必要ではないでしょうか?
もし、それらをまったく、あるいはたった1つ程度しか確認できないのなら、グレーはいつでも真っ黒に変わるかもしれない、という危機意識をもっておくことは必要ではないでしょうか?

これは、援助者側のリスクマネジメントの1つではないでしょうか?
 
また、80という高齢でありながら、認知症の妻との暮らしをなんとかやってきた夫に、タイムシートを用いながら、介護の様子をていねいに聞き、どうやってきたのかその対処を教えてもらう、こうした面接をていねいに行っていたら、、、、

ショックを受けているセンター職員を初めとする関係者のためにも、また、今後同じような悲劇が起きないようにするためにも、虐待者の問題点だけでなくストレングスについても、また、支援における問題・課題だけでなく、うまくいった支援についても確認し、そのうえで、今後取り組むべき課題への対処法をいろいろ検討していくというAAA式のケースカンファランスをぜひやってもらえるとよいのに、、、、 

後知恵のようですが、記事を読んでいてついこう思いました。

                   (副田あけみ)